The Model(ザ・モデル)とは?4部門の役割・KPI・導入手順をわかりやすく解説

営業活動が担当者ごとの経験や動き方に依存すると、商談数や受注数は安定しません。リードは増えているのに商談にならない、失注理由が次の施策に活かされない、といった課題が起こりやすくなります。

The Model(ザ・モデル)とは、見込み顧客との接点づくりから受注、契約後の支援までを一つの流れとして管理し、売上を再現しやすくする営業組織の考え方です。4部門に形式的に分けることではなく、売上が止まる工程を数字で把握し、必要な情報を前後の担当者へ引き継ぐことを重視します。

この記事でわかること

  • The Modelは、4部門への形式的な分業ではなく、売上が止まる工程を数字で特定して改善するための考え方
  • 少人数の会社でも、商談の定義・引き渡し条件・失注理由の記録を整えれば取り入れられる
  • 成果を出す鍵は、部門ごとのKPIだけでなく、受注・失注・解約の情報を前工程へ戻して改善し続けること

The Modelとは、売上を再現しやすくする営業組織の考え方

The Modelとは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスが、それぞれの役割を担いながら売上をつくる営業組織の考え方です。

顧客獲得から契約継続までの流れを分けて管理することで、売上が伸びない原因を特定しやすくなります。たとえば商談数が不足している場合でも、原因は「リード数が少ない」「獲得したリードへの初回接触が遅い」「商談の基準が厳しすぎる」などさまざまです。

一気通貫の営業では、こうした課題が個人の動きに埋もれやすくなります。The Modelでは工程ごとに役割と数値を置くため、改善すべき場所を判断しやすくなります。

The Modelは、Salesforceで実践・体系化された営業組織の考え方で、福田康隆氏の著書『THE MODEL』を通じて日本でも広く知られるようになりました。

ただし、書籍で紹介されている型をそのまま当てはめることが目的ではありません。自社の商材、営業人数、顧客の購買プロセスに合わせて、役割や受け渡し方を設計することが重要です。

The Modelの全体像

The Modelでは、一般的に次の4部門で営業活動を捉えます。

マーケティング
↓  ↑
インサイドセールス
↓  ↑
フィールドセールス
↓  ↑
カスタマーサクセス
↓  ↑
失注理由・顧客の声・継続状況を前工程へ還元


マーケティングが見込み顧客との接点をつくり、インサイドセールスが検討状況を確認して商談化を進めます。フィールドセールスが提案・受注を担い、カスタマーサクセスが導入後の活用や契約継続を支援する流れです。

ただし、実際の運用は一方向ではありません。フィールドセールスの失注理由や、カスタマーサクセスが把握した導入後の課題を前工程へ共有し、ターゲット設定や訴求、商談時の説明を見直します。

このように、後工程で得た情報を前工程へ戻し続けることが、The Modelの重要な考え方です。

従来の一気通貫営業との違い

一気通貫営業では、一人の営業担当者が新規開拓、商談、受注後のフォローまで担うケースがあります。顧客との関係を深めやすく、少人数の組織でも始めやすい方法です。一方で、担当者の得意不得意によって成果が変わりやすく、商談対応が増えると新規開拓が止まりやすいという課題があります。失注理由や顧客からの要望も、担当者の記憶や個別のメモにとどまりがちです。

The Modelは、営業を機械的に分業するための仕組みではありません。工程ごとの役割を明確にし、情報と数値を共有することで、営業活動を個人の力量だけに頼らない状態へ近づける考え方です。

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The Modelが注目される背景

The Modelが注目されている背景には、顧客の購買行動の変化があります。

BtoBでは、営業担当者と話す前に、顧客がWebサイト、比較記事、導入事例、セミナーなどを通じて情報収集を済ませていることが少なくありません。問い合わせがあった時点で、すでに複数社を比較している場合もあります。また、SaaSをはじめとする継続課金型のサービスでは、契約を獲得しただけでは売上が安定しません。導入後に使われなければ解約につながるため、営業と契約後支援を切り離して考えることが難しくなっています。

こうした環境では、「誰がどの工程を担い、どの情報を次の担当へ渡すか」を決めずに売上を伸ばし続けるのは困難です。The Modelは、そのための共通言語として使われています。

The Modelを構成する4部門の役割

4部門の役割は、次のように整理できます。

部門主な役割主な業務次工程につなぐ目的
マーケティング見込み顧客との接点をつくる広告、SEO、展示会、セミナー、資料ダウンロード施策検討可能性のあるリードを増やす
インサイドセールス商談化の可能性を見極め、育てる電話、メール、課題ヒアリング、追客商談の準備が整った案件をつくる
フィールドセールス商談を受注へ進める提案、決裁者との合意形成、見積、契約顧客の課題解決と受注を実現する
カスタマーサクセス利用定着・継続・拡大を支援する導入支援、活用支援、更新、追加提案顧客成果と継続売上を生む

マーケティング|見込み顧客との接点をつくる

マーケティングの役割は、自社のサービスに関心を持つ可能性がある企業や担当者との接点をつくることです。

Web広告、SEO記事、ホワイトペーパー、展示会、ウェビナー、メール配信などを通じて、見込み顧客(リード)を獲得します。このうち、企業規模や担当者の役職、資料の閲覧・ダウンロード状況などから、優先してフォローすべきと判断したリードをMQL(Marketing Qualified Lead)と呼びます。

重要なのは、リード数だけを追わないことです。商談や受注につながるリードを獲得できているかを確認し、その結果をもとにMQLの基準や施策を見直します。

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インサイドセールス|商談化の可能性を見極め、育てる

インサイドセールスは、獲得したリードに電話やメールで接触し、商談化の可能性を見極める役割です。

初回接触では、単にアポイントを取るのではなく、相手が抱えている課題、担当範囲、検討時期、現在の運用方法などを確認します。

商談に進める条件を満たしたリードは、SQL(Sales Qualified Lead)と呼び、フィールドセールスへ引き継ぎます。SQLの基準は、課題の明確さや導入時期、決裁者との接点などをもとに、自社の営業プロセスに合わせて決めます。まだ検討段階であれば、適切な時期まで情報提供や再接触を続けます。

営業代行でも、リスト作成や新規架電、初回ヒアリング、商談設定といったインサイドセールス業務を切り出す体制は一般的です。重要なのは、アポイント件数だけで成果を判断しないことです。どのような条件を満たした案件を「有効商談」とするのかを、商談担当者と事前にそろえる必要があります。

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フィールドセールス|商談を受注へ進める

フィールドセールスは、商談を通じて顧客の課題を深掘りし、提案から契約までを進める役割です。オンライン商談が中心の会社でも、商談・提案・受注を担う役割としてフィールドセールスと呼ばれます。

主な業務は、課題の整理、導入効果の提示、提案書や見積書の作成、決裁者との合意形成、契約条件の調整です。商談で聞いた内容をもとに、受注または失注の要因を記録し、前工程へ共有することも欠かせません。

受注・失注の要因を記録し、前工程へ共有することもフィールドセールスの重要な役割です。失注理由を具体的に分類して残すことで、ターゲット設定や商談設計の改善につなげられます。

カスタマーサクセス|顧客の成果を支援し、継続・拡大につなげる

カスタマーサクセスは、契約後の顧客がサービスを活用し、導入目的を達成できるよう支援する役割です。

SaaSでは、初期設定、利用開始の支援、活用状況の確認、契約更新、アップセル・クロスセルなどを担います。営業支援や人材支援などの継続サービスでも、定例会での進捗共有や改善提案、体制の見直しといった業務がこの役割にあたります。

カスタマーサクセスの役割は、解約を防ぐことだけではありません。契約前に営業が伝えた内容と、実際に提供する支援内容にずれがないかを確認することも重要です。導入後につまずきやすい点や、顧客が期待していた成果を営業側へ共有できれば、受注前の説明や提案の精度も上がります。

The Modelと関連する営業用語の違い

The Modelは、見込み顧客の獲得から契約後の継続までをどう管理するかという営業組織全体の考え方です。一方、SDR・BDR・ABMなどは、特定の工程で使うアプローチやターゲット戦略を指します。

用語意味The Modelとの関係
SDR問い合わせや資料請求など、すでに接点がある企業への対応を担うインサイドセールスの役割・アプローチインサイドセールスが担う代表的な活動
BDR狙う企業を定め、電話・メールなどで新規接点をつくるインサイドセールスの役割・アプローチインサイドセールスが担う代表的な活動
ABM受注したい重点企業を定め、営業・マーケティングの活動を集中させる戦略ターゲット設計やBDRの方針に使える
SFA商談、営業活動、案件進捗を管理する仕組みFSを中心に、商談・受注・失注情報を残す基盤
CRM顧客との接点や契約状況を管理する仕組み部門間で顧客情報を共有する基盤
MAメール配信や行動履歴の取得など、見込み顧客の育成を支援する仕組みマーケティングやISの継続フォローに活用する

たとえば、重点企業への新規開拓を強化したい場合は、ABMで狙う企業を決め、BDRで接点をつくります。The Modelでは、こうした施策を売上プロセスのどの工程で使うかを整理して管理します。

The Modelで重要なKPI|ファネル全体から売上を逆算する

The Modelでは、部門ごとに数字を追うだけでなく、リードから継続・拡大までの流れをつなげて見ます。

営業会議で「商談数が足りない」と話していても、その原因がリード不足なのか、初回接触の遅れなのか、商談化基準の厳しさなのかによって打つべき手は変わります。各工程の件数と転換率を分けておくと、改善箇所を絞り込めます。

The Modelの基本ファネル

段階意味管理する目的
リード問い合わせ、資料請求、展示会などで接点を持った企業・担当者見込み顧客の母数を把握する
MQLMarketing Qualified Leadの略。属性や行動から、マーケティングが有望と判断したリード優先して営業へ渡す対象を絞る
SQLSales Qualified Leadの略。営業が具体的に商談化を進める価値があると判断した見込み顧客ISが対応すべき案件を明確にする
商談自社で定めた条件を満たし、提案機会として成立した案件FSの案件数と受注率を管理する
受注契約に至った案件売上目標の達成状況を確認する
継続・拡張更新、追加契約、アップセル、クロスセル継続売上と顧客成果を把握する

MQLやSQLの定義は、企業によって異なります。たとえば、資料ダウンロード後に一定の従業員規模や業種条件を満たした時点でMQLとする会社もあれば、ウェビナー参加や複数回のサイト訪問を条件にする会社もあります。

大切なのは、一般的な定義をそのまま使うことではありません。マーケティング、IS、FSの間で「どの状態をMQL・SQL・商談と呼ぶか」をそろえることです。

受注目標から必要な件数を逆算する

たとえば、月5件の受注を目標とし、過去の実績から以下の転換率が出ているとします。

段階次工程への転換率月に必要な件数
受注5件
商談受注率25%20件
SQL商談化率40%50件
MQLSQL化率50%100件
リードMQL化率20%500件

この場合、月5件の受注には、500件のリード獲得が必要です。

ただし、毎月500件のリードを増やすことだけが正解とは限りません。たとえば商談から受注への転換率が25%から30%に上がれば、必要な商談数は17件程度まで減ります。SQLから商談への転換率が低いなら、ISのヒアリング項目や初回接触のタイミングを見直す方が効果的な場合もあります。

数字を逆算すると、「集客を増やすべきか」「商談の質を改善すべきか」「提案内容を見直すべきか」を感覚ではなく判断できます。

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MQLとは、マーケティング活動で獲得・育成した見込み顧客のうち、マーケティングが自社で定めた条件を満たすと判断したリードのことです。Marketing Qualified Lead(マー…

部門ごとに見る代表的なKPI

部門ごとのKPIは成果を競わせるためではなく、リード獲得から受注までの各段階(ファネル)で、どこが次の工程へ進みにくいかを把握するために使います。

部門主なKPI数字が伸びないときに確認すること
マーケティングリード数、MQL化率、商談数、商談単価ターゲット、訴求、集客チャネル、資料やセミナーの内容
インサイドセールス(IS)接触率、SQL化率、商談化率、商談化までの日数リストの精度、初回接触の速さ、会話設計、追客ルール
フィールドセールス(FS)受注率、平均受注単価、失注率、商談期間案件の質、課題の深掘り、提案内容、決裁者との接点
カスタマーサクセス(CS)継続率、解約率、拡張売上、利用状況導入支援、活用定着、期待値のずれ、支援体制

たとえば、マーケティングが獲得したリード数は多いのにSQL化率が低い場合、単純にISの架電量が足りないとは限りません。ターゲット外のリードが多い、資料のテーマと提供サービスがずれている、問い合わせ時点では検討温度が低いといった可能性があります。

反対に、SQL化率は高いのに受注率が低い場合は、商談で確認すべき課題や決裁条件が不足しているか、提案内容が顧客の優先課題に合っていない可能性があります。

商談の定義と引き渡し基準をそろえる

The Modelで特に重要なのが、ISからFSへ案件を渡す基準です。

「担当者と話せた」「とりあえず話を聞くと言われた」という状態だけで商談化すると、FSから「質の低いアポが多い」と評価されやすくなります。一方で、条件を厳しくしすぎると、本来は育成できた案件まで失います。

そのため、商談として引き渡す条件を、具体的な情報で定めます。たとえば、次の項目が確認できているかを基準にできます。

  • どの業務や課題を見直したいのか
  • 誰が担当し、誰が決裁に関わるのか
  • いつまでに検討したいのか
  • 現在どのような方法・サービスを使っているのか
  • 次回商談で何を確認・提案するのか

すべての項目がそろわなければ渡せない、という意味ではありません。商材や営業スタイルに合わせて「必須項目」と「商談時に追加確認する項目」を分けることが現実的です。

また、FSが案件を差し戻す場合も、「質が低い」で終わらせないことが大切です。「決裁者へ到達する見込みがない」「導入時期が1年以上先」「対象業種ではない」のように理由を分類して残せば、ISは次回以降の見極めに活かせます。

失注・解約の情報を前工程へ戻す

The Modelでは、受注した案件だけでなく、失注・解約した案件の情報も重要です。

失注理由を「予算がない」「他社に決まった」とだけ記録しても、次の改善にはつながりません。少なくとも、次のように理由を分けて残すと分析しやすくなります。

  • 予算化前で、検討時期が早かった
  • 競合と比較して導入効果を示し切れなかった
  • 決裁者との商談機会をつくれなかった
  • 必要な機能や対応範囲が合わなかった
  • ターゲット企業の規模や業種が合っていなかった

解約理由も同様です。導入支援が不足していたのか、営業時点で期待値を上げすぎていたのか、そもそも受注すべきではない顧客だったのかを分けて確認します。

失注や解約の情報をマーケティング・IS・FSへ戻せるようになると、集客する企業、初回接触時の確認項目、商談で伝えるべき内容を見直せます。The Modelは、各部門に数字を持たせる仕組みではなく、こうした情報を使って売上プロセス全体を改善する考え方です。

The Modelを導入するメリット

The Modelのメリットは、部門を増やすことではありません。営業活動のどこで成果が止まっているのかを把握し、改善を繰り返せる状態をつくれる点にあります。

売上が止まっている原因を数字で判断できる

商談数が目標に届かない場合でも、原因は一つではありません。

  • リード獲得数が不足している
  • 獲得したリードへの接触が遅れている
  • ISからFSへの引き渡し条件が厳しすぎる、または緩すぎる
  • 商談から受注への転換率が低い
  • 受注後の解約が多い

工程ごとの件数と転換率を見れば、「とにかく架電数を増やす」「広告費を増やす」といった判断を避けやすくなります。

たとえば商談数は足りているのに受注率が低いなら、優先すべきはリード獲得ではありません。案件の見極め、提案内容、決裁者へのアプローチなどを見直す必要があります。

営業活動を個人依存から仕組みに変えやすい

営業担当者ごとに顧客情報や進め方が異なると、担当変更のたびに引き継ぎの負担が生まれます。退職や異動があれば、過去の提案内容や失注理由が分からなくなることもあります。

The Modelでは、顧客情報、接触履歴、商談化の条件、失注理由、契約後の課題を部門をまたいで残します。結果として、特定の担当者だけが成果を出せる状態から脱しやすくなります。

もちろん、営業担当者の経験や提案力が不要になるわけではありません。ただし、成果が出た理由・失注した理由を組織に残せば、次の担当者や新しく入ったメンバーも再現しやすくなります。

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売上予測と人員計画を立てやすくなる

受注率や商談化率が把握できていれば、受注目標から必要な活動量を逆算できます。

たとえば、月10件の受注に40件の商談が必要で、1人のフィールドセールスが月20件まで対応できるなら、少なくとも2人分の商談対応体制が必要です。商談を増やす前に、提案や受注対応が滞らないかを判断できます。

マーケティング予算、インサイドセールスの人数、営業代行へ依頼する範囲も、売上目標と転換率をもとに検討しやすくなります。

担当変更による顧客体験の分断を防ぎやすい

顧客にとっては、マーケティング、IS、FS、CSと担当者が変わっても、同じ会社とのやり取りです。

前の担当者に伝えた課題や希望を次の担当者が把握していなければ、顧客は同じ説明を繰り返すことになります。「導入前に聞いていた内容と違う」と感じさせる原因にもなります。

担当者間で共有すべき情報を決めておけば、顧客の検討状況、課題、約束事項を引き継ぎやすくなります。分業によって顧客体験を悪化させないためにも、受け渡しの設計が必要です。

The Modelを導入すべき会社か判断するチェックリスト

The Modelは、すべての会社が4部門に組織を分けるためのものではありません。まずは、自社の営業プロセスにどの程度課題があるかを確認しましょう。

以下のうち、3つ以上当てはまる場合は、The Modelの考え方を取り入れる優先度が高いといえます。

  • 商談数や受注数が月ごとに大きく変動する
  • リード獲得後の対応が担当者任せになっている
  • 商談化の基準が営業担当者によって異なる
  • 失注理由を十分に記録・分析できていない
  • 契約後の解約理由や顧客の声が営業へ共有されない
  • 商談対応が増えると、新規開拓や追客が止まりやすい
  • 受注までの流れに一定のパターンがある
  • 営業担当者の異動・退職時に、案件の引き継ぎで困ることが多い

一方、少数の大口顧客に対して長期間かけて提案する営業では、完全な分業が合わないこともあります。たとえば、経営層との関係構築から提案、導入後の支援までを同じ担当者が担う方が成果につながるケースです。

その場合も、The Modelの考え方が不要になるわけではありません。役割を細かく分ける代わりに、ターゲット企業ごとの攻略を設計するABMや、一気通貫営業と組み合わせる方法が考えられます。少人数の会社なら、まずは役割・KPI・情報共有のルールを整理するところから始めるのが現実的です。

営業代行を活用する場合のThe Modelの考え方

営業代行では、リスト作成、新規架電、メール送信、商談設定、商談同席、活動分析などを役割ごとに依頼するケースが多くあります。

営業代行を活用する場合も、自社と代行会社の役割分担、商談の定義、商談後のフィードバック方法をそろえることが重要です。

営業代行に任せやすい業務

営業代行で切り出しやすい業務には、次のようなものがあります。

  • ターゲット企業リストの作成・精査
  • 新規架電、メール、問い合わせフォームなどによる初回接点づくり
  • 見込み顧客へのヒアリングと商談設定
  • 失注案件や休眠リードへの再アプローチ
  • 商談同席、提案準備、フィールドセールス支援
  • 活動ログの整理、KPI集計、改善提案

たとえば、自社の営業担当が商談や提案に追われている場合は、初回接点づくりや追客を営業代行へ任せることで、FSが受注確度の高い商談に集中しやすくなります。

営業代行を活用する前に決めておくこと

営業代行の成果をアポイント件数だけで判断すると、「件数はあるが受注につながらない」という問題が起こりやすくなります。開始前に、少なくとも次の項目をそろえておきましょう。

  • ターゲット企業・担当者の条件
  • アポイントと有効商談の定義
  • 商談化までに確認するヒアリング項目
  • 自社と営業代行の役割分担
  • 活動結果を確認する頻度と、改善判断を行う担当者
  • 商談後・失注後のフィードバック方法

商談後の結果は、営業代行側にも共有します。受注・失注だけでなく、案件の温度感や失注理由まで戻すことで、ターゲットや会話設計を改善できます。

営業代行をアポイント供給だけの関係にせず、マーケティング・IS・FSの受け渡しと改善サイクルまで設計することが、成果を安定させるポイントです。

The Modelがうまく機能しない主な原因

The Modelは、役割を分けたりツールを導入したりするだけでは機能しません。部門ごとの目標だけを追っている、情報が記録されない、改善を判断する場がないといった状態では、前後の工程が連携しにくくなります。

部門ごとのKPIだけを追っている

マーケティングがリード数、インサイドセールスがアポイント数、フィールドセールスが受注数だけを追うと、部門ごとの数字は伸びても、営業全体の成果につながらないことがあります。

たとえば、リード数やアポイント数を増やしても、フィールドセールスが「商談にならない」と判断する案件ばかりなら、受注は増えません。

そのため、部門ごとのKPIに加えて、MQLからSQL、SQLから受注へ進む転換率も確認します。どの工程で案件が止まっているかが分かれば、改善すべき部門や施策を判断できます。

商談の定義がそろっていない

ISは「担当者と会話できたため商談」、FSは「課題・導入時期・決裁者が確認できて初めて商談」と考えていると、引き渡し後に認識のずれが起こります。

この状態では、FSが案件を差し戻しても、ISは何を改善すべきか分かりません。商談の定義は、確認項目と記録方法までそろえ、差し戻す場合の理由も分類します。

こうすることで、「件数は足りているが受注につながらない」原因を、ISとFSが同じ基準で見直せるようになります。

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失注・解約の情報が戻ってこない

受注した案件だけを共有していても、営業プロセス全体は改善できません。

たとえば「競合に負けた」という失注でも、価格が合わなかったのか、必要な機能が不足していたのか、決裁者に価値を伝え切れなかったのかで、見直すべき内容は異なります。解約についても、営業時に伝えた内容と導入後の支援にずれがなかったかを確認する必要があります。

まずは失注・解約時に、担当者が理由を選択して記録する項目を用意します。分類は細かくしすぎず、以下のように始めると運用しやすいでしょう。

  • 予算が合わない
  • 検討時期ではない
  • 競合を選んだ
  • 要件・機能が合わない
  • 決裁に進めなかった
  • 導入後の期待値とのずれ

加えて、競合名や具体的な経緯、再提案の時期が分かれば補足します。月次の定例で件数と理由を確認し、「誰に向けた提案を見直すか」「どの説明を改善するか」を決めます。失注・解約の情報は、営業担当だけで抱えず、マーケティング、IS、FS、CSが確認できる場所に残すことが重要です。

記録項目が多すぎて現場に定着しない

商談の背景や失注理由を細かく残そうとして、入力項目を増やしすぎると、現場では記録が後回しになりがちです。

まずは、次の担当者が対応するために必要な情報と、改善判断に使う情報に絞りましょう。商談化の理由、顧客の課題、検討時期、次回対応、失注理由などから始めると運用しやすくなります。

数字を見ても改善の担当者が決まっていない

KPIを集計していても、「誰が」「いつまでに」「何を変えるか」が決まらなければ、数字は改善につながりません。週次または月次で確認する場を設け、課題となっている工程と次のアクションを決める運用が必要です。

会社の規模別|The Modelの取り入れ方

営業担当が少ない企業|まずは役割と記録を分ける

営業が1〜2人の段階では、4部門に組織を分ける必要はありません。一人がマーケティング、IS、FSを兼務していても問題ありません。

ただし、役割まで曖昧にすると改善しづらくなります。たとえば、次のように業務を分けて管理します。

  • 新規接点づくり:リード獲得、リスト作成、架電、メール送信
  • 商談化:初回ヒアリング、検討時期の確認、追客
  • 受注:提案、見積、決裁者との調整
  • 契約後支援:導入支援、定例会、更新対応

兼務であっても、工程ごとの件数・転換率・失注理由を残せば、どこから改善すべきか判断できます。

部門がある企業|組織改編より受け渡しと評価基準を見直す

すでにマーケティング、営業、カスタマーサポートなどの部門がある企業では、先に大きな組織改編を行う必要はありません。

まずは、次の3点をそろえます。

  • リード・MQL・SQL・商談を何で判定するか
  • 次工程へ渡す際に必ず共有する情報は何か
  • 商談・失注・解約の結果を誰が、どこへ戻すか

たとえばISの評価をアポイント件数だけにすると、FSとの対立が起こりやすくなります。有効商談率や受注につながった商談の割合も確認することで、部門間で同じ成果を目指しやすくなります。

The Modelの導入手順

導入初期からツールの入れ替えや組織再編に着手する必要はありません。まずは、営業活動を同じ基準で見られる状態をつくります。最初の30日では、以下の項目を決めることを目安にしましょう。

項目決める内容
ファネル定義リード、MQL、SQL、商談、受注を何で判定するか
引き渡し条件次工程へ渡す必須情報、差し戻し条件
記録場所活動履歴、失注理由、次回接触日をどこで管理するか
定例会週次・月次で確認する数字、参加者、改善担当
最初の改善対象最も転換率が低い工程を一つ選ぶ

1. 現在の営業プロセスを書き出す

まず、見込み顧客との最初の接点から、受注後の支援・契約更新までの流れを書き出します。たとえば、Web問い合わせから商談につながる場合は、次のように整理できます。

Web問い合わせ → 初回連絡 → ヒアリング → 商談 → 提案・見積 → 受注 → 導入支援 → 契約更新

この時点では、きれいな組織図にする必要はありません。「誰が担当しているか」「どこで案件が止まりやすいか」「何を記録しているか」を確認することが目的です。

2. ファネルと商談の定義を決める

前章で紹介したリード、MQL、SQL、商談などの各段階について、自社ではどの状態を指すのかを決めます。

たとえば、「担当部署と課題を確認できたらSQL」「日程・参加者が確定し、提案機会として成立したら商談」といった基準です。

一般的な定義に合わせることよりも、マーケティング、IS、FSの間で判断がぶれない状態をつくることが重要です。

3. 各工程の責任者と引き渡し条件を決める

各工程の担当者と、次の工程へ引き渡す条件を明確にします。

たとえば、ISからFSへ商談を引き渡す際に、「アポイントを取得したら渡す」だけでは、商談の質にばらつきが出やすくなります。最低限、次の情報を共有するルールを決めておきましょう。

  • 顧客が抱えている課題や見直したい業務
  • 現在の運用方法・利用中のサービス
  • 検討時期
  • 担当者と決裁者の関係
  • 次回商談で確認したいこと
  • 顧客へ伝えた内容や約束事項

条件に満たない案件は、すぐにFSへ渡すのではなく、ISが継続して情報提供や再接触を行います。顧客に同じ質問を繰り返させず、次の担当者が適切な準備をして商談に臨むためにも、受け渡しの設計が必要です。

4. 売上目標から必要な件数を逆算する

受注目標と実績の転換率をもとに、各工程で必要な件数を逆算します。

たとえば、月3件の受注が目標で、商談からの受注率が20%の場合、必要な商談数は15件です。さらに、SQLから商談へ進む割合が50%なら、30件のSQLが必要になります。

受注目標:3件
商談受注率:20%
→ 必要商談数:15件

SQL商談化率:50%
→ 必要SQL数:30件

このように逆算すると、「リードは増えているのに受注が増えない」といった状態でも、改善すべき工程を判断しやすくなります。

実績が十分にない場合は、最初から正確な数値を出す必要はありません。仮の数値を置き、1〜3か月の運用結果を見ながら更新していけば問題ありません。

5. 失注・解約理由を分類し、定例で改善する

失注や解約の理由は、担当者ごとの自由記述だけでは集計・改善につなげにくくなります。選択式で大きく分類し、必要に応じて補足を残す運用がおすすめです。

分類例確認したいこと
検討時期が早いいつ頃なら再提案できるか
予算が合わない予算未確保か、費用対効果への懸念か
競合を選定した価格・機能・提案内容のどこで負けたか
要件が合わない商品や支援範囲を見直す必要があるか
決裁に進めない決裁者や稟議での障壁は何か
優先度が低い何が優先され、再浮上の条件は何か

週次または月次で、各工程の件数・転換率・失注理由を確認し、「どの工程を、誰が、いつまでに改善するか」を決めます。

受注・失注・解約の結果をマーケティングやISにも共有すれば、ターゲット設定、訴求内容、ヒアリング項目まで改善できます。The Modelは、数字を確認するだけでなく、前工程へ学びを戻し続けることで機能します。

The Modelに関するよくある質問

The ModelはSaaS以外でも使えますか?

使えます。The ModelはSaaS企業で広く知られた考え方ですが、営業代行、人材紹介、コンサルティング、製造業などでも活用できます。

ただし、契約までの期間が長い商材や、担当者の関係構築が重要な商材では、完全な分業が合わないことがあります。その場合も、工程ごとの役割、KPI、情報共有のルールを整える考え方は有効です。

少人数の会社でも導入できますか?

できます。営業担当が1人でも、工程ごとの役割・数字・引き継ぐ情報を整理すれば取り入れられます。組織を4部門に分ける必要はありません。

The Modelを導入するためにCRMやSFAは必要ですか?

必須ではありません。初期段階であれば、スプレッドシートでも管理できます。

ただし、担当者や案件数が増えると、活動履歴、引き渡し情報、失注理由が分散しやすくなります。その段階でCRMやSFAを導入すると、情報共有と集計の負担を減らせます。ツールを先に入れるのではなく、管理したい項目と運用ルールを決めてから選定することが重要です。

まとめ

The Modelとは、マーケティング、インサイドセールス、フィールドセールス、カスタマーサクセスが、売上プロセス全体を連携して改善するための考え方です。重要なのは、組織を形式的に分けることではありません。

  • 各工程の役割と引き渡し条件を明確にする
  • リードから受注・継続までの数字をつなげて見る
  • 商談・失注・解約の情報を前工程へ戻す
  • 自社の人数や商材に合わせて分業の度合いを決める

まずは、営業プロセスの可視化と商談定義の統一から始めるとよいでしょう。

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