インサイドセールスのKPIとは?平均値・設定方法・KPIツリーを解説

インサイドセールスの成果を高めるには、架電数やアポイント数だけでなく、受注につながるまでの各工程を数字で把握する必要があります。そこで重要になるのがKPIです。
ただし、KPIを多く設定すればよいわけではありません。接続率、担当者接触率、アポ設定率、有効商談率などを営業プロセスに沿って確認し、どこに課題があるか判断できる状態をつくることが重要です。
この記事では、インサイドセールスで追うべきKPI、平均値を見る際の注意点、KGIから逆算した設定方法、KPIツリーの作り方を解説します。
この記事でわかること
- インサイドセールスのKPIは、架電から受注貢献まで工程ごとに設定する
- KPIの目標値は、受注目標と自社の転換率から逆算して決める
- 完全新規のBtoBアウトバウンドでは、総コールアポ率1〜2%程度が初期目安
インサイドセールスで追うべきKPI一覧
インサイドセールスでは、活動量だけでなく、担当者と接触できているか、商談につながっているか、商談の質が受注につながっているかまで分けて確認します。
| KPI | 計算式 | 何がわかるか | 低い場合に確認すること |
|---|---|---|---|
| 架電数 | 架電した件数 | 必要な活動量を確保できているか | 架電時間、リスト数、他業務の割合 |
| 接続率 | 接続数 ÷ 架電数 × 100 | 電話がつながる状態か | 架電時間帯、電話番号の精度、代表番号の割合 |
| 担当者接触率 | 担当者接触数 ÷ 接続数 × 100 | 目的の部署や担当者に届いているか | 受付での伝え方、部署情報、連絡先情報 |
| 有効会話率 | 有効会話数 ÷ 担当者接触数 × 100 | 次のアクションを判断できる会話ができているか | ターゲット、冒頭の訴求、質問内容、接触時期 |
| アポ設定率 | アポ設定数 ÷ 有効会話数 × 100 | 有効会話からアポイントを設定できているか | 課題仮説、訴求内容、アポイントの打診方法 |
| 商談実施率 | 実施商談数 ÷ アポ設定数 × 100 | 設定したアポイントが実際の商談につながっているか | 日程確定後のフォロー、参加者、商談目的の共有 |
| 有効商談率 | 有効商談数 ÷ 実施商談数 × 100 | フィールドセールスへ渡す商談の質が保たれているか | 有効商談の定義、ヒアリング項目、引き渡し基準 |
| 受注貢献数・受注貢献額 | IS起点の受注件数・受注金額 | インサイドセールスの活動が売上につながっているか | ターゲット、商談品質、失注理由、ISとFSの連携 |
KPIは、活動量・接触の質・商談の質・受注への貢献を分けて確認します。計画を下回った最初の工程を特定し、原因に応じて改善策を決めましょう。
インサイドセールスのKPIとは
KPIとは、Key Performance Indicatorの略で、日本語では「重要業績評価指標」と呼ばれます。最終目標の達成に向けて、日々・週次・月次の活動がどの程度進んでいるかを確認するための指標です。
インサイドセールスの場合、KPIには架電数やメール送信数といった活動量のほか、接続率、担当者接触率、アポ設定率、有効商談率などがあります。受注に至るまでのプロセスを分解し、各段階の状態を確認できるように設定します。
KPI・KGIの違い
KPIとあわせて、最終目標を示すKGIも確認しましょう。
| 用語 | 意味 | 例 |
|---|---|---|
| KGI | 最終目標を測る指標 | 受注件数、受注金額、パイプライン創出額 |
| KPI | KGI達成に向けた進捗を測る指標 | 有効商談数、アポ設定率、担当者接触率 |
たとえば、KGIを「四半期で受注10件」と置いた場合、そこから必要な有効商談数、商談数、担当者接触数、架電数を逆算してKPIを設定します。
KPIが計画どおりでも受注につながらない場合は、ターゲット条件や商談の引き渡し基準を確認します。
インサイドセールスでKPI設定が必要な理由
インサイドセールスの活動は、最終的な受注までに複数の工程があります。架電した件数だけでは、担当者と話せていないのか、会話はできているものの商談化できていないのか、商談の質に課題があるのかを判断できません。
KPIを工程ごとに設定すると、次のような状態をつくれます。
- 未達の要因を感覚ではなく数字から切り分けられる
- メンバーごとに必要な支援や改善点を把握できる
- マーケティング・フィールドセールスと共通の基準で会話できる
- 必要な人員や活動量を見積もりやすくなる
インサイドセールスの役割や営業プロセス全体での位置づけについては、「インサイドセールスとは?成果を出す仕組み・戦略・組織づくりを徹底解説」の記事でも詳しく解説しています。
架電数やアポ数だけを追うと失敗する理由
架電数をKPIにすると、活動量の不足には気づけます。しかし、架電数だけを追う運用では、つながりにくい時間帯への電話や、商談化しにくいリストへのアプローチが増えても、数字上は達成に見えてしまいます。
同様に、アポイント数だけを追うと、フィールドセールスが受け取りにくい商談や、受注可能性の低い商談が増えるおそれがあります。結果として、インサイドセールスは目標を達成しているのに、営業組織全体では受注につながらない状態になりかねません。
そのため、インサイドセールスのKPIは、少なくとも「活動量」「接触の質」「商談の質」「受注への貢献」の4段階に分けて設定することが大切です。
インサイドセールスで設定すべきKPIと計算式
KPIは、営業プロセスの各工程で「量」「到達状況」「商談の質」「受注への貢献」を確認できるように設定します。
ただし、すべてを主要KPIにすると管理が複雑になります。最終目標に直結する数値を主要KPIとし、原因を確認するための数値を補助KPIとして扱うと運用しやすくなります。
活動量を測るKPI
架電数
架電数は、接続率や担当者接触率とあわせて確認します。件数が計画どおりでも接続率が低い場合は、架電数を増やす前に、時間帯やリストの電話番号を見直します。
メール送信数
メール送信数は、メールでアプローチした件数です。電話だけでは接触が難しい担当者への補完手段として使われます。
メールは送信数だけでは評価できません。対象企業の優先度、送信先の役職、返信後にどのようなアクションにつながったかまで見ないと、活動量だけが増えることになります。電話とメールを併用する場合は、チャネルごとに送信数を分けて記録し、商談化までの経路を追えるようにしましょう。
接触の質を測るKPI
接続率
接続率は、架電したうち電話がつながった割合です。
接続率 = 接続数 ÷ 架電数 × 100
ここでいう「接続」は、受付や代表電話につながった状態を指します。担当者本人と話せた割合ではないため、後述する担当者接触率とは分けて管理します。
接続率が低い場合は、次の順で確認します。
- 架電時間帯ごとの接続率に差がないか
- 代表番号、直通番号、携帯番号のどれにかけているか
- 古い電話番号や不通番号が多くないか
- 業種・企業規模ごとに接続率が大きく異ならないか
架電数を増やす前に、つながる条件を特定することが重要です。
担当者接触率
担当者接触率は、電話がつながったうち、目的の部署や担当者と会話できた割合です。
担当者接触率 = 担当者接触数 ÷ 接続数 × 100
受付で「担当者不在」と言われたケースをすべて失敗として扱う必要はありません。ただし、担当者名や部署、在席時間、折り返し方法を把握できたかによって、次回以降の接触可能性は変わります。
担当者接触率を改善する際は、受付突破だけに目を向けず、リストに部署名・役職・担当領域の情報があるかも確認します。誰に何の件で連絡したいのかが不明確な状態では、担当者までつながりにくくなります。
有効会話数・有効会話率
有効会話とは、単に担当者と会話できた状態ではなく、課題、現状、検討状況、担当範囲など、次のアクションを判断するための情報を得られた会話を指します。
有効会話率 = 有効会話数 ÷ 担当者接触数 × 100
有効会話の定義は、商材や営業方針により異なります。たとえば、次のような状態を有効会話として定義できます。
- 対象となる業務や課題の有無を確認できた
- 担当部署や決裁構造を把握できた
- 導入時期や検討の優先度を確認できた
- 次回連絡の許可や具体的な接点を得られた
担当者接触数は多いのに有効会話数が伸びない場合、問題はリストではなく、冒頭の訴求や質問設計にある可能性があります。
商談の質を測るKPI
アポ設定数・アポ設定率
アポ設定数は、インサイドセールスが設定したアポイントの件数です。アポ設定率は、有効会話のうちアポイントを設定できた割合を示します。
アポ設定率 = アポ設定数 ÷ 有効会話数 × 100
アポ設定率が低い場合は、対象企業、接触時期、訴求内容、アポイントの打診方法を会話ログから確認します。
原因はトークだけとは限りません。対象企業の優先度が低い、提案時期が早い、商談で何を話すのか相手に伝わっていないといった可能性もあります。
商談実施数・商談実施率
商談実施数は、設定したアポイントのうち、実際に実施された商談の件数です。商談実施率は、アポ設定数に対する実施商談数の割合を示します。
商談実施率 = 実施商談数 ÷ アポ設定数 × 100
商談実施率が低い場合は、日程確定後のフォロー、参加者、商談目的の共有方法を確認します。
有効商談数・有効商談率
有効商談とは、フィールドセールスが提案や案件化を進める価値があると判断した商談です。
有効商談率 = 有効商談数 ÷ 実施商談数 × 100
有効商談率が低い場合は、対象企業、担当者の役割、課題、導入時期、商談内容を確認します。フィールドセールスからの差し戻し理由も記録し、アポイントの設定基準やヒアリング項目へ反映します。
受注への貢献を測るKPI
受注貢献数・受注貢献額
受注貢献数は、インサイドセールスが創出または育成に関わった商談から生まれた受注件数です。受注貢献額は、その受注金額を指します。
アポ設定数や有効商談数は、インサイドセールスが比較的コントロールしやすい指標ですが、受注は提案内容、価格、競合状況、フィールドセールスの営業活動にも左右されます。そのため、受注貢献を個人評価の唯一の基準にするのではなく、営業組織としてターゲットや商談品質が適切かを見る指標として活用します。
受注貢献まで追うことで、表面的にはアポ設定率が高いにもかかわらず、受注につながりにくいセグメントや訴求が見えてきます。インサイドセールスの評価と、営業プロセス全体の改善を切り離さないためにも必要な指標です。
インサイドセールスのKPI平均・目安はどれくらいか
インサイドセールスのKPIは、アプローチ方法や商材によって大きく変わります。特に、接点のない企業へ電話をかける完全新規アウトバウンドと、資料請求や展示会後のフォローでは、同じ基準で比較できません。
完全新規アウトバウンドのアポ獲得率は、総コール数に対して1〜2%を初期目安にする
過去のBtoB完全新規アウトバウンドの事例では、総コール数に対するアポ獲得率は1〜2%程度が一つの目安になります。
100件架電して1〜2件のアポイントを設定できれば、リスト・訴求・架電設計を見直しながら改善を進められる水準です。担当者名を把握している既存リードや、資料請求後のフォローでは、同じ目安は使いません。
ここでいうアポ獲得率は、次の式で算出します。
総コールアポ率 = アポ設定数 ÷ 総コール数 × 100
総コールアポ率と接触後アポ率は分けて確認します。総コールアポ率が低くても接触後アポ率が高い場合は、会話内容よりもリストや担当者接触率に改善余地があります。
完全新規アウトバウンドの実績例
あるBtoBの完全新規アウトバウンドでは、100コールあたり約28件の担当者接触、約3件のアポイント設定となりました。
| 指標 | 100コールあたりの実績 |
|---|---|
| 担当者接触数 | 約28件 |
| アポイント設定数 | 約3件 |
| 総コールに対する担当者接触率 | 28.4% |
| 総コールアポ率 | 2.9% |
| 接触後アポ率 | 10.2% |
この事例では、総コールアポ率は2.9%でした。ただし、週ごとの数値にはばらつきがあります。月単位のアポ数だけで判断せず、担当者接触率と接触後アポ率を分けて確認することで、リスト・接触設計・会話内容のどこを改善すべきか判断できます。
平均値を比較するときにそろえるべき条件
外部データや他案件の数値と比較する際は、次の条件をそろえます。
- 完全新規か、既存リードか
- SDRか、BDRか
- 総コール数、担当者接触数、有効会話数のどれを分母にするか
- 対象企業の業種・規模・役職
- 商材の単価や検討期間
- 電話、メール、フォームなどのアプローチ手段
総コールアポ率が低く、接触後アポ率が高い場合は、リストや担当者接触率の改善を優先します。担当者接触率が高く、接触後アポ率が低い場合は、ターゲットや訴求を見直します。
架電数・担当者接触率・アポ設定率の目標を決める考え方
目標値は、外部の平均値だけで決めず、自社の実績転換率と受注目標から設定します。
月10件の有効商談が必要で、有効商談率が50%なら、実施商談数は20件必要です。商談実施率が80%なら、必要なアポ設定数は25件です。アポ設定率が20%なら、125件の有効会話が必要になります。
改善対象は、一度に一つへ絞ります。担当者接触率が低い場合はリストや架電時間、接触後アポ率が低い場合はターゲットや訴求を優先して見直します。
インサイドセールスのKPI設定方法|KGIから逆算する6ステップ
KPIは、受注目標と営業プロセスにつながる形で設定します。現場の活動量から積み上げるより、最終目標から逆算するほうが、優先順位がぶれません。
1. 最終目標となるKGIを決める
最初に、営業組織として達成したい成果を決めます。代表的なKGIは、受注件数、受注金額、パイプライン創出額です。
インサイドセールス単体の成果地点を「商談創出」とする場合も、商談の先にある受注目標を確認しておきます。受注とのつながりを見ずに商談数だけを設定すると、商談の質を保ちにくくなるためです。
2. インサイドセールスが担う成果地点を決める
次に、インサイドセールスの役割を明確にします。
たとえば、問い合わせリードへの初回対応と商談設定を担うSDRでは、商談数や有効商談数が主な成果地点になります。一方、ターゲット企業への新規開拓を担うBDRでは、キーパーソンとの接触やターゲット企業での商談創出が重要な指標です。
この成果地点が曖昧だと、インサイドセールスはアポイント数を増やし、フィールドセールスは有効商談数を求める、といったズレが生じます。
3. 有効商談の定義をフィールドセールスとそろえる
有効商談の定義は、KPI設計の中心です。定義がなければ、インサイドセールスがアポ設定率を上げるほど、フィールドセールスの負担が増えることがあります。
定義には、次の項目を含めると判断しやすくなります。
- 対象企業の条件
- 担当者の部署・役職
- 把握できている課題
- 導入目的や検討背景
- 導入時期・予算・決裁状況
- 次回商談で確認する内容
すべての条件を満たす商談だけを有効とする必要はありません。商材や営業方針に合わせて、必須項目と確認できれば望ましい項目に分けます。
定義が決まったら、CRMやSFAの入力項目、商談引き渡し時の共有方法、フィールドセールスからの差し戻し理由までそろえます。
4. 過去実績から各工程の転換率を確認する
KPIツリーに置く転換率は、可能な限り自社実績を使います。
確認するのは、たとえば次の数字です。
- 架電数に対する接続数
- 接続数に対する担当者接触数
- 担当者接触数に対する有効会話数
- 有効会話数に対するアポ設定数
- アポ設定数に対する実施商談数
- 実施商談数に対する有効商談数
- 有効商談数に対する受注数
実績がまだ少ない立ち上げ期は、仮説の数値で始めます。その場合は、数値を固定せず、2〜4週間単位で実績との差を確認しながら更新します。
5. 必要な活動量に分解する
KGIと各工程の転換率が決まれば、必要な活動量を算出できます。
たとえば、月3件の受注を目標とし、有効商談から受注への転換率が20%であれば、有効商談は15件必要です。有効商談率が50%であれば、実施商談数は30件必要になります。
さらに商談実施率とアポ設定率をさかのぼり、必要なアポ設定数と有効会話数を算出します。その後、担当者接触率と接続率から、月間・週間・日次の必要架電数を設定します。
この計算で重要なのは、稼働日数と担当者数も反映することです。月間600件の架電が必要でも、担当者2名・稼働20日であれば、1人あたり1日15件です。実行可能な水準かどうかを確認し、必要に応じてリスト数、人員配置、目標のいずれかを調整します。
6. 日次・週次・月次で見るKPIを分ける
すべてのKPIを毎日確認しても、改善判断はしにくくなります。指標ごとに確認頻度を分けると、現場の行動と責任者の判断をつなげやすくなります。
| 確認頻度 | 主に見るKPI | 確認する目的 |
|---|---|---|
| 日次 | 架電数、接続数、担当者接触数 | 活動量と当日のアクションを調整する |
| 週次 | 接続率、有効会話率、アポ設定率、商談実施率 | リスト、時間帯、訴求、日程確定後の対応を見直す |
| 月次 | 有効商談率、受注貢献数、受注貢献額 | ターゲット、商談品質、部門連携を見直す |
日次では数字の増減より、翌日に変える行動を決めます。週次では工程ごとのボトルネックを特定し、月次ではKPIそのものが受注につながっているかを確認します。
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【図解・数値例】インサイドセールスのKPIツリーの作り方

KPIツリーは、KGIから必要な活動量までを一つの流れでつなぐ図です。
営業目標と日々の架電・メール活動の関係が明確になり、どの工程を改善すべきか判断しやすくなります。
ここでは、月3件の受注を目標にする場合を例にします。
KPIツリーの前提条件
| 工程 | 転換率 |
|---|---|
| 有効商談 → 受注 | 20% |
| 実施商談 → 有効商談 | 50% |
| アポ設定 → 商談実施 | 80% |
| 有効会話 → アポ設定 | 20% |
| 担当者接触 → 有効会話 | 40% |
| 接続 → 担当者接触 | 50% |
| 架電 → 接続 | 40% |
月3件の受注に必要な活動量
| 工程 | 必要件数 | 算出方法 |
|---|---|---|
| 受注 | 3件 | KGI |
| 有効商談 | 15件 | 3件 ÷ 20% |
| 実施商談 | 30件 | 15件 ÷ 50% |
| アポ設定 | 38件 | 30件 ÷ 80% |
| 有効会話 | 190件 | 38件 ÷ 20% |
| 担当者接触 | 475件 | 190件 ÷ 40% |
| 接続 | 950件 | 475件 ÷ 50% |
| 架電 | 2,375件 | 950件 ÷ 40% |
必要件数に端数が出た場合は、各工程で切り上げます。
2名体制・月20稼働日で運用する場合、必要な架電数は1人1日あたり約60件です。
2,375件 ÷ 2名 ÷ 20日 = 約60件
この数字が現実的かを確認します。1人1日60件を実行できる体制か、必要なリスト数を確保できるか、商談後のフォロー業務にどの程度の時間がかかるかをあわせて確認します。
KPIツリーは「必要架電数」を出すためだけに使わない
KPIツリーの価値は、未達時に改善箇所を特定できる点にあります。
たとえば、実施商談数は計画どおりでも有効商談数が不足している場合、架電数を増やしても解決しません。有効商談の定義、ヒアリング項目、フィールドセールスへの引き渡し基準を確認する必要があります。
一方、アポ設定率は計画どおりでも担当者接触数が不足している場合は、トークよりリスト、架電時間帯、受付対応の見直しを優先します。
転換率が変わった場合の影響
架電から接続への転換率が40%から30%へ下がった場合、必要架電数は次のように変わります。
950件 ÷ 30% = 約3,167件
接続率40%の場合と比べて、月間で約792件、1人1日あたり約20件の追加架電が必要です。
3,167件 − 2,375件 = 792件
792件 ÷ 2名 ÷ 20日 = 約20件
KPIツリーは、各工程の改善が最終目標へどれほど影響するかを判断するために使います。
KPIツリー作成時に入力する項目
自社用のKPIツリーを作成する際は、次の数字を用意します。
- 月間または四半期の受注目標
- 有効商談から受注への転換率
- 実施商談から有効商談への転換率
- アポ設定から商談実施への転換率
- 有効会話からアポ設定への転換率
- 担当者接触から有効会話への転換率
- 接続から担当者接触への転換率
- 架電から接続への転換率
- 稼働日数と担当者数
立ち上げ期は仮説値で作成し、実績がたまるたびに更新します。KPIツリーは一度作って終わりではなく、営業プロセスの変化にあわせて見直すものです。
SDR・BDR別|重視すべきKPIの違い
SDRとBDRでは、アプローチ対象と役割が異なります。同じ「商談化」を目標にしていても、追うべきKPIや目標値を同一にすると実態に合いません。
| 区分 | 主な役割 | 主に見るKPI | 管理上のポイント |
|---|---|---|---|
| SDR | 問い合わせ・資料請求・既存リードへの対応 | 初回対応時間、担当者接触率、アポ設定率、有効商談率 | リード発生後の対応速度と、検討度に応じたフォローを重視する |
| BDR | 接点のないターゲット企業への新規開拓 | ターゲット企業接触数、キーパーソン接触率、有効会話数、商談創出数 | リストの優先順位、複数チャネルでの接触、アカウントごとの進捗を重視する |
SDRは初回対応と商談品質を重視する
SDRは、すでに何らかの接点がある見込み顧客へアプローチします。そのため、初回対応までの時間、リード情報を踏まえた会話、アポ設定後の商談実施率と有効商談率が重要です。
資料請求直後に連絡できたリードと、数日後に連絡したリードでは、接続率や会話の質が変わることがあります。SDRでは、架電数よりも「優先度の高いリードへ適切なタイミングで接触できているか」を確認します。
BDRはターゲット企業への接触設計を重視する
BDRは、まだ課題が顕在化していない企業も含めて、新たな商談機会をつくる役割です。架電数だけでは成果を測れません。
確認すべきなのは、優先ターゲット企業へどの程度アプローチできているか、キーパーソンと接点を持てているか、会話から次の接点へ進めているかです。
同じ企業に複数回アプローチする場合は、電話・メール・紹介・イベントなどの接点を記録し、企業単位で進捗を管理します。個人の架電実績だけで見ると、重要企業へのアプローチ不足を見落とします。
KPIが未達のときに見るべき原因と改善方法
KPIが未達だった場合は、目標との差だけを見るのではなく、最初に落ちた工程を特定します。後工程の数字は前工程の影響を受けるため、受注や商談数だけを見ても原因は分かりません。
| 未達KPI | 主な原因 | 最初に確認すること | 改善アクション |
|---|---|---|---|
| 接続率 | 架電時間、番号精度、リストの鮮度 | 時間帯別・リスト別の接続率 | 架電時間の変更、番号の更新、リスト精査 |
| 担当者接触率 | 部署・担当者情報の不足、受付での離脱 | 受付で止まった理由、部署別の接触状況 | 担当部署の特定、リスト情報の補完、受付トークの調整 |
| 有効会話率 | 訴求の弱さ、対象とのずれ、接触時期 | 会話が短く終わった理由、役職別の反応 | 冒頭訴求の見直し、ターゲットの再設定、質問設計の改善 |
| アポ設定率 | 課題仮説の不足、アポイント打診のタイミング | アポイントを設定できなかった理由、会話内容 | 訴求内容の見直し、事例の追加、ナーチャリング設計 |
| 商談実施率 | 日程確定後のフォロー不足、参加者や目的の認識ずれ | キャンセルや延期の理由 | リマインド、参加者確認、商談目的の事前共有 |
| 有効商談率 | 有効商談の定義のずれ、情報不足 | FSからの差し戻し理由 | 必須ヒアリング項目の設定、引き渡し基準の統一 |
| 受注貢献数・受注貢献額 | ターゲットとのずれ、商談品質、案件の停滞 | 失注理由、商談後の進捗 | ターゲットの見直し、失注分析、IS・FS連携の改善 |
接続率が低い場合
接続率は、担当者の会話力よりもアプローチ条件の影響を受けます。まず、時間帯・曜日・リスト区分ごとに接続率を分けて確認します。
たとえば、特定の業種だけ接続率が低い場合は、営業時間や電話を受ける部署の特性に合っていない可能性があります。代表番号への架電が多い場合は、部署直通番号や担当者情報を補完するだけでも改善することがあります。
確認後は、接続率の高い時間帯へ架電を寄せ、低い時間帯はメールやリスト整備に使うなど、稼働配分を変えます。
担当者接触率が低い場合
担当者接触率が低い場合は、目的の部署・役職が曖昧なまま電話しているケースが多くあります。
企業名と電話番号だけのリストでは、受付から適切な担当者へつながりにくくなります。少なくとも、想定部署、担当領域、役職の仮説を持ったうえでアプローチします。
受付で得られた情報も記録します。「担当者不在」「管轄外」「メールでの連絡希望」などの結果を蓄積すると、次回の接触方法を変えられます。
有効会話率・アポ設定率が低い場合
担当者と話せているにもかかわらずアポイントを設定できない場合は、会話内容を確認します。
- 冒頭で連絡目的が伝わっているか
- 相手の業務や課題に関する質問ができているか
- 相手の状況に合った価値を示せているか
- 商談で何を確認・解決できるのか伝えているか
- 「今ではない」と言われた際に次回接点を残せているか
アポ設定率を改善する際は、トークだけを直すより、反応がよい業種・役職・課題を特定することが先です。
有効商談率が低い場合
有効商談率は、ISとFSの連携状態を映す指標です。商談数はあるのに有効商談が少ない場合、フィールドセールスから差し戻された理由を分類します。
分類例は次のとおりです。
- 対象企業の条件が合っていない
- 担当者の権限が不足している
- 課題や導入目的を確認できていない
- 導入時期が遠い
- 既存の競合製品・契約状況を把握できていない
- 商談の目的が共有されていない
分類結果をもとに、必須ヒアリング項目や商談登録時の入力項目を更新します。IS側だけで解釈を変えるのではなく、FSと定例で確認し、定義をそろえます。
受注貢献が低い場合
有効商談率が高いのに受注貢献が低い場合は、商談の先にある失注理由を確認します。
たとえば、予算や導入時期の条件は満たしていても、商材との適合度が低い、競合優位性が弱い、決裁者への提案機会をつくれていないといった要因があります。
この段階では、ISの活動量を増やすより、受注した案件と失注した案件の違いを比較することが重要です。受注企業の業種・規模・課題・商談化の経緯を整理し、ターゲット条件や訴求へ反映します。
KPIを形骸化させない運用方法
KPIは、数値を報告するだけでは成果につながりません。確認頻度、改善の担当者、次回までに変える行動を決めて運用します。
数字と失注理由・会話内容をセットで確認する
数字だけでは、未達の理由を判断できません。アポ設定率が下がった週は、会話ログや失注理由も確認します。
数字は「何が起きたか」を示し、会話内容や失注理由は「なぜ起きたか」を示します。この二つをそろえることで、改善策を具体化できます。
マーケティング・FSと定義を定期的に見直す
ISが追うKPIは、マーケティングのリード定義やFSの受注基準とつながっています。
マーケティングが渡すリードの条件、ISが商談化する基準、FSが有効と判断する条件を定期的に確認します。部門ごとの数字を最適化するより、受注につながるプロセス全体を改善することが重要です。
インサイドセールスのKPI設定でよくある失敗
全員・全チャネルに同じKPIを設定する
問い合わせ対応、展示会フォロー、新規開拓、休眠顧客の掘り起こしでは、接触しやすさも商談化までの流れも異なります。
チャネルごとの数字を一つにまとめると、どこで成果が出ているのか判断しにくくなります。リード獲得経路やSDR・BDRの役割ごとに、主要KPIを分けて設定しましょう。
有効商談の定義がない
有効商談の定義がなければ、ISとFSの間で商談の評価が分かれます。ISは商談数を達成していても、FSは提案に進めないという状態が起こります。
対象企業、担当者、課題、検討時期などの基準を決め、CRMやSFAの入力項目にも反映します。定義は営業方針や商材の変化に応じて更新します。
未達後の改善アクションが決まっていない
KPI会議で数字を確認しても、次回までに何を変えるかが決まらなければ、同じ課題が続きます。
「接続率が低い」なら時間帯別の実績を確認する、「アポ設定率が低い」なら対象企業と会話ログを見直す、といったように、KPIごとに確認項目と改善アクションを決めておきます。
インサイドセールスのKPIに関するよくある質問
インサイドセールスのKPIは何個設定すべきですか?
主要KPIは3〜5個程度に絞ると、日常の運用に乗せやすくなります。活動量、接触の質、商談の質、受注への貢献から、現時点の課題に合う指標を選びます。原因確認に使う補助KPIは、必要に応じて追加します。
アポ率・アポ設定率の平均はどの程度ですか?
完全新規のBtoBアウトバウンドでは、総コールアポ率1〜2%程度が初期目安です。ただし、商材、リスト、対象企業、アポイントの定義によって変わります。
比較する際は、アポ設定数を総コール数で割った「総コールアポ率」と、担当者接触数で割った「接触後アポ率」を分けて確認します。
KPIツリーはどのように作りますか?
受注件数や受注金額をKGIに置き、有効商談、商談、担当者接触、接続、架電へ順に分解します。各工程には自社の実績転換率を入れ、必要な活動量を算出します。
KPIが未達の場合、最初に確認すべき数字は何ですか?
最終成果からさかのぼり、最初に計画を下回った工程を確認します。商談数が不足している場合でも、接続数、担当者接触数、有効会話数のどこで差が生じたかによって対策が変わります。
SDRとBDRでKPIは分けるべきですか?
分けるべきです。SDRは初回対応時間やアポ設定率、BDRはターゲット企業・キーパーソンへの接触や商談創出数を重視します。対象と役割が異なるため、同じ目標値で比較すると判断を誤りやすくなります。
KPIはどのくらいの頻度で見直すべきですか?
活動量は日次、転換率は週次、商談品質や受注貢献は月次で確認する方法が基本です。立ち上げ期やリスト変更直後は変動が大きいため、短い周期で仮説と実績を見比べます。
まとめ
インサイドセールスのKPIは、架電数やアポイント数を管理するための数字ではありません。受注につながるまでの工程を可視化し、改善するための指標です。
まずは、受注目標から有効商談、商談、担当者接触、接続、架電へと逆算し、自社の営業プロセスに合うKPIツリーを作成しましょう。そのうえで、未達となった工程の原因を切り分け、リスト、訴求、商談定義、部門連携を見直します。
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